細胞内Ca^<2+>貯蔵部位と連関するCa^<2+>流入(「容量性Ca^<2+>流入」)について、ラットグリオーマC6、ヒト白血病Jurkat及びラット肝培養細胞を用いて検討した。C6細胞において、種々の薬物受容体刺激薬及び小胞体Ca^<2+>-ATPase阻害薬thapsigargin(TG)による持続的な細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)の上昇は受容体作動性Ca^<2+>流入の阻害薬であるtetrandrineにより消失した。百日咳毒素(IAP)、フォーボルエステル、チロシンキナーゼ阻害薬及び細胞骨格阻害薬を前処置しても、種々の薬物受容体刺激薬及びTGによる[Ca^<2+>]_iは影響を受けなかった。Jurkat細胞においては、IP_3に感受する細胞内Ca^<2+>貯蔵部位ばかりかサイクリックAMPに感受する細胞内貯蔵部位が存在し、いずれも「容量性Ca^<2+>流入」に関与するであろうことが示された。さらに、フォスファチジン酸に感受する細胞内貯蔵部位も存在するが、これは「容量性Ca^<2+>流入」に関与しないことが認められた。ラット肝培養単一細胞ではvasopressinによりCa^<2+>オシレーションが観測され、このオシレーションはruthenium red (RR)により、用量依存性に抑制及び消失した。しかし、TGによる[Ca^<2+>2]_i上昇に対してRRは全く影響を及ぼさなかった。 「容量性Ca^<2+>流入」に連関しない細胞内貯蔵部位も存在するが、「容量性Ca^<2+>流入」は新しいCa^<2+>流入経路というよりは受容体作動性Ca^<2+>チャネルの活性化機構を説明すると思われる。さらに、この活性化機構にはIAP感受性G蛋白質、プロテインキナーゼC、チロシンキナーゼ及び細胞骨格は関与しないものと考えられる。
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