アルカリホスファターゼ(ALP)が、glycosylphosphatidylinositol(GPI)を介して膜にアンカーしていることは既に明らかであるが、GPI中にMannoseが存在することにより生合成にDol-P-mannoseが介在していることが予想される。そこで、本研究ではDol-P-mannose合成の阻害剤である2-fluoro-2-deoxy-D-glucoseおよびMannosamineの効果を培養細胞を用い生合成レベルで検討した。前駆体のC末端部ペプチドに対する抗体を作成し、合成直後のC末端部のプロセシングを薬剤の存在・非存在下で調べた。非存在下では、64.5kDaの分子種として合成されたものが5分以内にC末端部ペプチドが切断され、63kDaの高マンノース型から66kDaの成熟型へと変換されるのに対し、薬剤存在下では、まず61kDaの分子種として合成された。この分子量の減少は、N結合糖鎖不全による。上記のペプチド抗体を用いて調べた結果、この61kDa分子種は合成後3時間までC末端部ペプチドは検出され、その後徐々に58-59kDaの分子種にプロセスされて5時間後培養液中に分泌されることが明らかになった。また、薬剤存在下に検出されるいずれの分子種にも、GPIが存在しないことをラベル実験で確認した。従って、GPIの合成が阻害されるとC末端部のプロセシングがうまくいかず、前駆体のままおそらく小胞体にとどまり、その後徐々にC末端部が切断されて分泌型に変換されると考えられる。
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