動物の発生過程における形態形成には、種々の誘導現象(細胞間相互作用)が重要な働きを担っているが、そこでは作用し合う細胞の時間的・空間的な組合せのタイミングが重要であると考えられ、種々の誘導因子(現象)が発現時期及び部域を調節される必要がある。我々は、誘導能及び受容能の部域的時間的調節の機構を解明する目的で中胚葉誘導因子として知られるアクチビンに関する因子を対象として1)アクチビン、アクチビンレセプター、ホリスタチンの時間的空間的発現パターンの解析、2)ホリスタチン遺伝子の構造とプロモーター機能の解析、3)形態形成におけるアクチビンレセプター及びホリスタチンの機能解析をテーマとして研究を行った。結果の概要を以下に述べる。 1)各因子の時間的空間的発現を解析した結果、アクチビン及びアクチビンレセプターは、初期においての局在は認められておらずむしろ均一に発現しているのに対して、ホリスタチンの発現は、初期から脊索に局在して起こり、後期においてもその局在性は保たれることが判明した.これらは、ホリスタチンの限局された発現がアクチビンの活性制御に重要であることを示している.2)ホリスタチン遺伝子の構造は、全長16Kbのホリスタチン全遺伝子領域を含むクローンを単離し、全塩基配列を決定した。その結果、ホリスタチンの exon-intron構成及び約2kbの遺伝子上流域の構造を明らかにできた。プロモーターと推定できる領域には、TATAモチーフなど数種類のシスエレメント様構造が存在することが明らかとなった。3)形態形成における各因子の機能を、mRNA注入による過剰発現系を利用して解析した結果、アクチビンは初期胚において背側の形成に重要な働きを持っていること、また、その活性もしくはアクチビンに対する受容細胞の応答能は、初期の早い段階から局在して存在することを明らかにした。一方、ホリスタチンの過剰発現系は、初期胚の形態形成に異常をもたらし、ホリスタチンが神経系の発生に関与していることが明らかとなった。
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