研究概要 |
本研究はショウジョウバエ複眼光受容細胞の形態形成や構造維持に関与する蛋白質の細胞内構造上での局在と機能との関係を、電子顕微鏡法と分子遺伝学的手法を用いて明らかにしようとするものである。本年度は主としてrdgAタンパク質(eye-specific diacylglycerol kinase,eye-DGK)について解析を進めた。 1.これまでに我々はrdgA遺伝子突然変異では、光受容膜近傍の特殊な滑面小胞体(subrhabdomeric cisternae,SRC)が欠損することを示した。さらにrdgAタンパク質の細胞内局在を免疫電子顕微鏡法によって調べたところ、rdgAタンパク質がSRC膜に局在する事が明かとなり、DGKが主としてSRC膜で機能していることが強く示唆された。そこで、rdgAタンパク質のSRCへの局在化機構を明らかにする目的で、rdgAタンパク質のC-末端領域に存在するアンキリンリピート(AK)ドメインの役割を調べた。AKドメインを欠損するrdgAタンパク質を光受容細胞に強制発現させたところ、このタンパク質は正常なタンパク質同様、SRCに局在していた。このことから、AKドメインはSRC膜との結合には関与せず、むしろ何らかの調節機能を有している可能性が考えられた。 2.また、rdgAタンパク質の欠損による光受容細胞変性にprotein kinase C(PKC)が関与している可能性を検証する目的で、rdgA遺伝子とPKCの遺伝子inaCの二重突然偏移を作製したところ、この偏移体の光受容細胞はrdgA単独の偏移体と同様に変性した。このことから、rdgA突然偏移における細胞変性はPKCの異常活性化によるものではなく、むしろDGK活性の欠損によるphosphatidic acidの欠乏が主因であると考えられた。これらの結果から、SRCがリン脂質代謝を通して光受容細胞の形態維持に深く関与していることが明かとなった。
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