アフリカツメガエルの戻し交配で得られた母系効果突然変異(af)の雌が産む全ての卵(af卵)は、卵割溝が収縮しないために細胞質分裂が起こらない。この突然変異を利用して、卵割溝の収縮に関与する分子を同定することが本研究の目的である。本年度の研究により、以下の成果が得られた。 1.以前に野生型卵とaf卵の細胞質中に含まれる構成蛋白の比較を行い、af卵では分子量78kDa、等電点7.6の蛋白が欠損することを示した。本研究では、この蛋白に対するモノクローナル抗体を作成し、これを用いて細胞質構成蛋白のWestern blottingを行った。その結果、78kDa蛋白には複数のisoformが存在することが解り、これが卵割溝の収縮に直接関与している分子かどうか、再検討する必要がでてきた。 2.野生型とaf卵の構成蛋白で78kDa蛋白以外の差を検出するために、卵割溝の収縮に関与すると考えられている小麦胚芽レクチン(WGA)結合蛋白、アクチン結合蛋白、燐酸化蛋白の比較を行った。その結果、WGA結合蛋白とアクチン結合蛋白に差が認められた。特に、WGA結合蛋白に関しては、af卵では205kDaの蛋白が欠損しており、34kDa付近の蛋白にも差が見られた。今後これらの蛋白について細胞質分裂との関連を解析する予定である。 3.af卵に野生型卵の細胞質を注入すると、af卵の卵割溝が収縮するので、これを利用して、野生型卵細胞質からの卵割溝収縮活性を持つ蛋白の精製を試みた。硫安沈澱とイオン交換カラムクロマトグラフィーによる細胞質の分画で卵割溝収縮活性が得られ、活性成分の純度を8.5倍に精製した。
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