アフリカツメガエルの母系効果突然変異体(af)の雌が産む卵(af卵)の卵割溝は収縮しない。af卵の第一卵割が始まる前に、野生型の受精卵細胞質を顕微注入すると、af卵の第一卵割溝が収縮する。野生型卵細胞質を種々の生化学的手段で分画し濃縮後、af卵に顕微注入することにより、卵割溝収縮活性因子の精製を試みた。 硫安沈澱を行うと0-40%飽和で沈澱する分画に活性が見られた。これをDEAE sepharoseカラムで分画すると、260-280 mM NaClで溶出する分画に活性が見られた。活性分画を集めてもう1度DEAE sepharoseカラムで分離すると、3本の分画に卵割溝収縮因子の活性が存在した。この活性分画には分子量約31kDaと33kDaの2本のバンドが濃縮されていた。DEAE sepharoseカラムの活性分画をSuperose 12によるゲル濾過カラムと疎水性カラムでさらに精製した。その結果は、31kDaまたは33kDaの蛋白が卵割溝収縮因子の有力な候補であることを示唆した。今後もひき続き精製を行い、卵割溝収縮活性蛋白のアミノ酸配列の解析や抗体の作製を介して、遺伝子の単離を行う。 af突然変異を維持するために、多くのかけ合わせを行ったところ、新たな卵割異常卵を産む雌が見つかった。この雌が産卵した受精卵の半数弱は、第一卵割または第二卵割の収縮が不十分で、胚は多核体となり致死となる。第二卵割まで正常であっ胚は、色素パターンに異常が見られるものの、第三卵割以降も正常に卵割し正常発生を行う。一部の胚のみが致死になるので、この卵割異常の原因は、卵割溝の収縮に関係するmaternal productの不足または軽度の機能障害によるものと考えられる。
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