精子と卵子の融合をin vitroで行うには精子濃度が1X10^6/ml程度は必要である。ヒト精子の受精能を測定する目的でハムスターの透明帯を取り除いた卵子との融合を起こさせるハムスターテストという方法が提案され実際に用いられている。しかし、このときにもかなりの精子濃度が必要である。このために従来は男性不妊患者の中でoligozoospermiaのヒトに対してはこのテストを用いることができなかった。このことを解決するためにまず健常人から精子を採取しメディウム中でインキュベーションした。このようにして得られたコンディションドメディウムをoligozoospermiaの患者の精子に加えてハムスターテストを行ったところ通常の条件では全く融合の起こらない7名の患者においても融合を観察することができた。 この因子の本体を検討するためマウス精子からも同様にコンディションドメディウムを調製したところ同じ作用があることが確認された。むしろその作用はマウスにおいて強く現われた。この因子には種特異性のないことが示唆された。この因子の作用機作は精子に対して先体反応を促進させる働きであることが先体反応特異的に反応するモノクローン抗体とセルソーターによる分析で明らかになった。 oligozoospermiaの患者は必ずしも不妊ではないが今回の検討によってoligozoospermiaのヒトからの精子にも融合能を証明することができた。さらにこれらの患者において受精能が低下する一因として精子数の減少による環境中のある因子の欠乏によっていることが示唆された。
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