研究概要 |
本年度の成果は,昨年の結果をまとめて発表した2編の論文(Kageyama et al.,(1994) Insect Biochem.Mol.Biol.,24,599-605 : Hatakeyama et al.,(1994) Roux's Arch.Dev.Biol.,203,450-453)のほか,以下の通りである. 1.精子束を生理食塩水に懸濁したもの,雄内部生殖器,あるいは雄虫体をそのまま,凍結保護剤を加えることなく単に液体窒素に投入して凍結保存し,解凍して得た精子は形態的に異常で,運動性をもたず,明らかに死んでいるが,成熟未受精卵に注入すると受精卵を生じること,すなわち,このように保存した精子は遺伝資源として有用であることを明らかにした(Hatakeyama et al.,(1994) J.Insect Physiol.,40,909-912). 2.カブラハバチ未成熟卵巣を同属異種のセグロカブラハバチ雄成虫に移植し,幼若ホルモンの投与により宿主雄に卵黄蛋白質産出を誘導すると,セグロカブラハバチ卵黄蛋白質のみを取り込んだ成熟カブラハバチ卵が得られ,発生完了できることを明らかにした.カブラハバチ卵黄蛋白質の産出がないことは,カブラハバチ卵黄蛋白質 cDNA を用いた Northern blot 法で確認した(Hatakeyama et al.投稿中). 3.抗カブラハバチ卵黄蛋白質抗血清,カブラハバチ卵黄蛋白質 cDNA を用いて,広腰亜目約20種について,卵黄蛋白質遺伝子翻訳産物,転写産物の保存性を調べたところ,非常に良く保存されていることを確認した.数種については変異が認められ,系統関係を含めてさらに検討が必要である.
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