研究概要 |
膜翅目昆虫カブラハバチは、成熟未受精卵(未産卵成熟未受精卵、あるいは卵巣卵)を単に水に浸すだけで付活することができ、また昆虫では精子注入(intracytoplasmic sperm injection, ICSI)による受精が可能な唯一の系である。本補助金による研究では、すでに、卵前端に精子を注入すると受精がおこるが、後端に注入すると卵核、精子核が独立に発生する半数体キメラを生じること、などの成果を得ているが、最終年度の本年の成果は以下の通りである。 1.未成熟卵巣を別種雄成虫腹腔内に移植し、ホルモン処理により卵黄蛋白質合成を誘導すると、異種卵黄蛋白質のみを蓄積して卵は成熟する。移植された卵巣による卵黄蛋白質の寄与がないことは、すでに得ている卵黄蛋白質遺伝子cDNAクローンをプローブとしたノーザンブロット法で確認した。未成熟卵巣の凍結保存が可能になれば、すでに成功している精子凍結法と併せて、種が絶滅しても、近縁種が存在すれば、種の復活が可能であると論議した(J. Insect Physiol., 41,351-355(1995))。 2.すでに得ている抗カブラハバチ卵黄蛋白質抗血清を用い、また上述したカブラハバチ卵黄蛋白質遺伝子cDNAクローンをプローブとして用い、広く膜翅目広腰亜目で卵黄蛋白質の抗原性、同遺伝子の塩基配列が極めてよく類似していることを明らかにした。(J. Insect Physiol., in press (1996))。 なお、これらの成果は、これまでの結果とあわせて、総説としてまとめた(Proc. Arthropod. Embryol. Soc. Jpn. 30,1-8(1995))。
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