両生類イモリの輸精管から十分に成熟した精子を密度勾配遠心で分離し、凍結融解後、超遠心の上澄から精子アゴニストを得た。抽出物を凍結乾燥した後に濃縮・保存した。卵付活の活性を測定するために、ゼリー層を除去したアフリカツメガエルの未受精卵をこの精子抽出物で処理をおこない、不活電位の出現をと細胞膜イオンチャンネルの開閉をパッチクランプ法などにより測定することにより卵細胞膜上の精子アゴニストに反応するイオンチャンネルを詳しく解析した。 (1)Caイオンチャンネル分子の阻害剤であるNi、CoやCdイオンは精子アゴニストの反応を完全に遮断した。特にCdイオンはマイクロモルのレベルの濃度で効果があった。これらは、精子アゴニスト分子がCaチャンネルを開放していることを示している。現在、パッチクランプ法により精子アゴニスト分子が直接このチャンネル分子に作用していないことを示唆する実験結果を得ているが、完全な結論を得るまでにもう少しデータが必要である。 (2)CaイオンのキレーターのBAPTAの注入やIP3リセプターの阻害剤であるヘパリン注入が精子アゴニストの反応を完全に阻害した。更に、Ca誘発Ca放出を阻害すると言われているタプシガーギンは精子アゴニストの反応を阻害しなかった。 これらの結果は精子アゴニスト分子が、卵細胞膜上のリセプター分子に働いて卵付活を誘導していることを示しており、今後は、このリセプター分子の解明に努力する予定である。
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