研究課題/領域番号 |
05680648
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
武田 洋幸 理化学研究所, 安全評価研究室, 研究員 (80179647)
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研究分担者 |
天沼 宏 理化学研究所, 安全評価研究室, 主任研究員 (70107382)
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キーワード | 発生学 / 分子生物学 / ゼブラフィッシュ / ES細胞 / POUファミリー / Oct-3 / 原腸形成 |
研究概要 |
平成5年度では、既にクローニングが完了しているゼブラフィッシュ初期胚未分化細胞特異的転写因子zebrafish pou2の発現と機能解析を中心に以下のことを行った。zebrafish pou2はPOU転写因子群に属し、そのPOUドメインは哺乳類のOct-3と相同性がある。pou2遺伝子のmRNAは母性RNAとして検出され胞胚期までのすべての割球に存在し、原腸胚期から神経胚にかけて発現が消失する。詳しい発現パターンの解析から割球の多分化能の消失に伴いpou2の発現が消失していることが判明した。また、pou2遺伝子からはオクタマー配列を認識しDNAと結合するpou2とDNA結合能を持たないalternative splicing 産物、t-Pou2が産生されていた。このPou2およびt-Pou2の初期胚における機能を探るために合成RNAを一細胞期の受精卵に注入しこれらの産物を過剰発現させ、その後の発生を観察した。Pou2を過剰発現した胚のほとんどは正常に発生し12時間後に神経胚に到ったが、t-Pou2を過剰発現した個体の約7割は胞胚期から原腸胚期にかけて発生が停止もしくは著しく遅れ神経胚には到らなかった。発生異常を示すこれらの個体では、原腸形成に伴って分離する胚盤葉下層(将来の中・内胚葉)の形成に異常が認められ、初期中胚葉細胞の分化マーカー遺伝子であるT(Brachyury)遺伝子の発現が抑制されていた。これらの結果は、pou2遺伝子産物が初期発生、特に原腸胚期までの割球の多分化能の維持や発生運命の決定に関与していることを示している。今後は、pou2遺伝子産物の作用機序について同じ時期に発現しているPOU転写因子群との関わりに注目し解析していく予定である。
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