研究概要 |
平成6年度の研究で、ZFPOU2遺伝子のmRNAは原腸胚期に胚全体で消失する直前、epiblastで一過的に発現上昇が起こり、一方陥入したhypoblastで発現が急速に消失することがわかった。この特徴的な発現パタンと細胞分化の関係を明らかにするために、この時期の胚細胞の分化状態を細胞移植法により検討した。bitotin標識したドナー胚から細胞を取り出し、宿主胚の種々の場所に移植した。異所的に移植されたドナー細胞での分化マーカーの発現をin situ hybiridization法とavidine-peroxidase染色で検出した。その結果、神経上皮の前後軸に沿った領域特異性は原腸形成開始直後(初期原腸胚)に決定され始めるこが判明した。さらに、この過程には神経上皮を裏打ちするhypoblastが重要な役割を担っていることも明らかとなり、hypoblastからepiblastへの垂直方向の誘導がゼブラフィッシュで初めて確認された(Miyagawa et al,1996)。つまり、epiblastにおけるZFPOU2遺伝子の一過的発現上昇は神経細胞の分化決定時期に対応し、また、hypoblastでの発現消失はhypoblastの誘導能獲得の時期に対応していると言うことができる。このことはZFPOU2遺伝子産物の役割が各胚葉で異なっていることを示唆するもので興味深い。この遺伝子は、alternative splicingで機能の異なる遺伝子産物が作られているが、これら遺伝子産物の各胚葉での機能を今後調べるつもりである。一方、今回の移植実験の結果はゼブラフィッシュの神経上皮が胚発生の極めて初期の原腸形成初期に既に領域特性を獲得していること示している。
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