コレラトキシンサブユニットB(CTb)と結合したHRPを上頚神経節に注入し、3日後に固定し、脊髄からマイクロスライサーにより20-40ミクロン切片を作り、CTb抗体により節前交感神経を標識し、同時にグルタミナーゼ、グリシン、GABA、ないしグリシン受容体の抗体で神経要素を免疫細胞化学法により識別しシナプスの形態、局在、頻度を観察した。その結果、 1.逆行性に標識した交感神経節前神経に直接グルタミン酸神経がシナプス結合することを証明した。 2.グルタミン酸神経のシナプスの形態は、シナプス小胞が球形で、有芯小胞を含み、シナプス膜が興奮性とされる非対称性で、シナプス後要素が樹状突起に終るものがほとんどであった。 3.グルタミン酸神経シナプスの分布密度は、これまでに知られているペプチドないしアミン神経の頻度と比較して最も多いものの一つであることが判明した。 4.包埋前・後免疫細胞化学法を組み合せて、グリシンおよびGABAに対する抗体により、同時におなじ切片でそれぞれの局在を観察し、GABA神経の一部にグリシンを共存するものがあることが示された。 5.グルタミン酸合成酵素であるグルタミナーゼが、神経終末の他にシナプス近傍の星状膠細胞にも局在し、グルタミン酸の取込みと代謝に関与することが推定された。
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