1)多数のグルタミン酸を含む神経終末が胸髄交感神経節前神経核である、中間質外側核に分布することを、リン酸活性化グルタミナーゼの局在を免疫組織化学的に検出することにより示した。グルタミン酸は主要な興奮性神経伝達物質であることが、生理、薬理学的に示されており、これを形態的に裏ずけすることが出来た。 2)グルタミン酸神経は、興奮性のシナプスの特徴である非対称型のシナプス構造を示し、その一部は穴あき型のシナプスであった。シナプス小胞は小型球形のものと、大型の有芯小胞の2種を含み、樹状突起に終わるものが多かった。グルタミン酸神経の分布密度は、アセチルコリン、モノアミン、およびこれまでに調べたペプチド神経(エンケファリン、P物質、NPY、ダイノルフィン、VIP、ソマトスタチン等)と比較して最も高いものの一つであった。 3)グルタミン酸神経は、交感神経節前神経に直接シナプス結合することを、上頸交感神経節に注入したコレラトキシンサブユニットB-HRPの逆行性標識法と、免疫組織化学法を同時に行うことにより証明した。 4)グルタミナーゼが、グルタミン酸神経シナプス近傍の星状膠細胞にも局在し、グルタミン酸の取り込みと代謝に関与することが推察された。 5)GABAとグリシンは、主要な抑制性伝達物質であることが知られており、これを裏ずける形態的な所見を示した。GABAとグリシンは、一部の神経に共存する事が、包理前、後免疫組織化学法により示された。その意義は不明である。 6)酸化窒素(Nitric oxide、NO)神経が、脊髄中間質に多数分布し、その多くは交感神経節前神経と一致することをNOS(Nitiric oxide synthase)免疫組織化学により示した。これに対応して上頸神経節には密なNO神経終末の分布が見られたが、交感神経節神経にはNOS陽性神経はほとんど見られなかった。 7)脊髄中間質外側核の神経の大部分がNO産生神経であるが、一部はNOS免疫反応陰性である。この機能的意義はまだ解らない。 8)NOが逆行性の伝達物質ないし神経伝達調節物質として、交感神経系でもグルタミン酸シナプスの興奮性伝達を制御する可能性が示唆された。
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