研究概要 |
心臓は迷走神経、交感神経からの外来性の支配を受けているが、心房に内在する神経節も心臓の調節に重要な働きを担っている。心臓神経節細胞の伝達物質としては様々な物が報告されているが、近年発見されたMessenger moleculeである、酸化窒素もまた心臓内の情報伝達の担い手であることを、以前報告した。 前年度の研究で、酸化窒素合成酵素(nitric oxide synthase,NOS)は外来性の入力である迷走神経の一部と心臓神経節細胞の一部に含まれることがわかった。神経節では、NOSを持つ細胞と持たない細胞があり、前者が後者に軸索をのばしている像も認められた。また、NOSを含む神経線維が左心房にある神経節細胞に直接シナプスを作って接触していることも観察した。酸化窒素(NO)を伝達物質として持つ神経線維の性質を知るため、他の部位での分布も調べた。そして、頚動脈洞、頚動脈小体、鼻粘膜における分布も調べ、これらの器官でもNOがその調節に重要な役割を果していることを観察した。 本年度は、こうした結果を踏まえ、NOSを持つ線維と刺激伝導系の特殊心筋との関係を調べた。モルモットの心房中隔と心室中隔をNOSに対する抗体を用いた免疫組織化学により調べてみると心房中隔内の神経節にNOSを持つ神経細胞があり、そこからのびる陽性線維が房室結節に分布していた。陽性終末が結節の特殊心筋と直接接している像も電子顕微鏡で観察した。すなわち、NOは心臓の調節に直接関係していることが確認できた。
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