研究概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の胸髄側角神経細胞数は,人工呼吸管理期間が長い症例ほど,脱落の程度が強くなることを明らかにした。脊髄前角運動ニューロンと,交感神経前線維の起始核である側角神経細胞との直接的な線維連絡は報告されていない。従って,ALS側角神経細胞も恐らく前角細胞と同様一次性に,しかし前角細胞より遅れて変性脱落し,ここではブニナ小体やスフェロイドを形成することなく変性が進行することを報告した。 ヒト上肢切断後38年経過症例において,切断側頚髄の前角細胞,前根有髄線維,後根神経節神経細胞,後根有髄線維の脱落に加えて,非切断側前角でも中等大神経細胞が減少していたことを見出した。この所見から,ヒトにおいても,左右の前角を結ぶ介在ニューロンが存在する可能性,また本症例では,切断側前角細胞の変性によって介在ニューロンに逆向きのtransneuronal変性が惹起され,これによって非切断側の前角神経細胞が変性した可能性を指摘した。 また併せて,切断側前根では,有髄線維の再生が起きている可能性を指摘した。 大脳運動野のベッツ細胞も変性することが知られているcorticobasal degenerationで,神経細胞変性機序が,細胞骨格蛋白の変化と深く関連していることを報告した。
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