本研究では、当初の計画通り副腎皮質調節系と甲状腺調節系、及び成長ホルモン分泌系と甲状腺調節系に関して、包埋前二重免疫染色法により副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、ソマトスタチン(SS)についてCRF細胞-TRH細胞、TRH細胞-SS細胞間でのシナプス相関について研究を行うと共に、オキシトシン(OT)細胞とSS細胞に関する観察を加えた。 1 方法 (1)標本作成 コルヒチン処理SD系成熟雄ラットを、麻酔下にザンボニ変法液(pH7.4)で灌流し、視床下部の前頭断ビブラトーム切片を作成した。(2)特異抗血清作成 抗原として用いるペプチドホルモンを合成し、牛血清アルブミンとの結合物を抗原として兎に免疫し、各特異抗血清を得た。(3)免疫染色アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体を用いて、2種類のペプチドをベンジジンと銀粒子により分別標識して電顕観察した。 2 成果 室傍核小細胞領域において、CRF細胞に対しTRH線維がシナプス結合を形成し、さらにTRH細胞にはCRF線維がシナプス結合を形成する相互性神経支配を認めた。一方、TRH細胞とSS細胞の二重免疫染色では、TRH細胞へのSS線維支配は観察されたが、SS細胞に対するTRH線維のシナプス形成は観察されなかった。室傍核大細胞領域ではOT細胞へのSS線維のシナプス結合を認めた。 3 考察 本研究から異なるペプチドホルモン免疫陽性細胞の間にシナプス性神経連絡の存在が明らかになった。おそらくこのようなシナプス結合は各ホルモン分泌を相互調節するための室傍核に内在する神経性統御機構を示しているのではないかと考えられる。
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