研究概要 |
平成5年度は、脳内におけるアルギニン代謝系とアルギニンから合成される一酸化窒素合成系との関連性を調べる目的で、アルギニン代謝系の調律酵素であるアルギニ,コハク酸合成酵素(ASS)をふくむ神経細胞と、一酸化窒素合成酵素と密接な関連性をもつNADPH-diaphorase酵素活性の強陽性神経細胞との関係について、ニホンザル脳における免疫組織化学法あるいは酵素組織化学法などを使用して検索した。 ニホンザル脳でASS様免疫反応陽性神経細胞体が多数観察される部位は、大脳新皮質や線条体、上丘、小脳皮質などであった、大脳皮質でのASS様免疫反応陽性神経細胞体は主としてIV層に存在するが、NADPH-diaphorase酵素活性強陽性神経細胞は大部分がVI層に局在していた。また線条体におけるASS陽性神経細胞体は直径が7〜8×8〜10mumであるのに対して、NADPH-diaphorase強陽性神経細胞体の直径は18〜25×25〜35mumであった。このように存在する局在や神経細胞の種類などにおいて、ASS様免疫反応陽性神経細胞とNADPH-diaphorase強陽性神経細胞とはかなずしも一致しない結果をえた。この結果をさらに確認するために、同一標本においてASS様陽性神経細胞とNADPH-diaphorase強陽性神経細胞との検索を同時におこなう二重染色を大脳皮質と線条体とで実施した。その結果、やはり両者の重なりを神経細胞体で認めることができなかった。 以上の実験結果から間接的ながらもアルギニノコハク酸合成酵素を有する神経細胞は、一酸化窒素合成とは必ずしも関連性がないとの結論を本年度の研究期間でえることができた。アルギニノコハク酸合成酵素を含むアルギニン代謝系の神経細胞での役割を次年度には異なる角度からさらに追求していきたい。
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