研究概要 |
家兎小脳のミクロソ-ム画分を抗原として、正常マウスに免役し、ハイブリド-マ法により単クロ-ン抗体(mAb12D)を作製した。mAb12Dは小脳を認識し、大脳皮質・脳幹・脊髄との特異的免疫反応を示さなかったため、小脳を特異的に認識する抗体と判定した。mAb12Dによる光顕および電顕レベルの免疫組織化学を実施し、下記の知見を新たに得た。 1.mAb12Dは小脳のプルキンエ細胞を特異的に認識した。 2.mAb12D陽性のプルキンエ細胞軸索は、光顕的に同定した小脳核神経細胞やダイテルス核神経細胞に軸索終末を送っていた。 3.mAb12D陽性プルキンエ細胞軸索は、小脳皮質において同抗体陽性のプルキンエ細胞樹状突起に対して、CrayII型のシナプスを形成した。 4.mAb12D陽性プルキンエ細胞軸索は、小脳皮質の顆粒細胞にシナプスを形成した。 このようにプルキンエ細胞に対する特異抗体を確立した結果、この細胞の出力系と小脳皮質内分枝様式を形態学的に明らかにした。本研究が提示した小脳皮質内分枝様式は、プルキンエ細胞の側方抑制を支持する所見と考えられる。今後、側方抑制下にあるプルキンエ細胞群を明らかにすること、電気生理学的解析結果と照合することなどが当面の課題としてあげられる。さらにmAb12Dをひとつの標識マ-カ-として、コリン性苔状線維を標識するコリンアセチルトランスフェラ-ゼやペプチド性登上線維ないし苔状線維を標識するコルチコトロピン放出因子(Ikeda et al.,Neuroscience 1992)を別種の標識マ-カ-として各々を組合せ多重標識することによって、小脳皮質微小回路のシナプス構成を解明することを次の課題としたい。
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