研究概要 |
アストロサイト、小腸絨毛上皮下でネットワークを形成している筋線維芽細胞、小腸筋層間神経叢に付随する介在細胞(interstitial cell),肝臓の伊東細胞などは実質細胞と血管のあいだをつなぐ何らかのシグナル伝達や、血管の血流の調節機能を持つと考えられている。これらの細胞に共通して存在し機能している物質を見いだす為に、我々は培養小腸筋線維芽細胞を抗原としてアストロサイトや腸管筋層のinterstitial cellを染めるモノクローナル抗体8E1を作製し、その性質を解析した。生後1日から8週令のラット大脳の凍結切片を抗GFAP抗体と8E1とで二重ラベルすると、生後1日の大脳皮質では8E1、抗GFAP抗体、ともに腸性の細胞は見当たらなかった。生後6日では、8E1及び抗GFAP抗体腸性の細胞が増加し始め、GFAPを発現しているアストロサイトだけが8E1で染まることが明きらかになった。コンフォーカル顕微鏡で観察すると抗GFAP抗体では細胞突起の先端まで線維状に染まるのに対し、8E1ではドット状に突起の途中までしか染まっていなかった。また、培養アストロサイトを免疫電顕にて観察すると、8E1の抗原は主に中間径フィラメントにドット状に存在した。8E1抗原を解析するために、組織をSDS電気泳動しウエスタンブロッティングを行うと、大脳や培養アストロサイトに約50Kの抗原が存在し、肝臓や腎臓には存在しなかった。この結果、大脳のホモジェネイトを二次元電気泳動後ウエスタンブロッティングしてみると、GFAPの小スポットと同じ位置に8E1による大きいスポットが検出された。又、小腸筋線維芽細胞では8E1による4つの小スポットはビメンチンの4つの大スポットと位置が一致した。しかし、8E1は精製したヒト脳由来のGFAPや牛レンズ由来のビメンチンを認識せず、また、これらの抗原を大量に添加しても8E1は失活しなかった。以上の実験結果から、8E1はアストロサイトや筋線維芽細胞、interstitial cellに存在し、GFAPやビメンチンに非常に類似しているが、これらとは異なったエピトープを認識している可能性が示唆された。
|