電位依存性カルシウムチャンネルは多様な細胞機能の調節に重要な役割を果たしている。我々が行ってきたcDNAクローニングによるカルシウムチャンネルの構造決定及びcDNA発現による機能的同定により、カルシウムチャンネルは6種の遺伝子によりコードされており、さらにL型及び非L型サブファミリーに分類されることが明らかになった。今回、BI(P型)、及びBIII(N型)チャンネルと共に非L型サブファミリーに属するBIIチャンネルの発現実験をゼノパス卵母細胞を用いて行った。BIIチャンネルによる内向きバリウム電流は-20mV以上の試験電位で出現し、+13.7±9.3mVで最大になった。BIIチャンネルは活性化速度においてはBIやBIIIチャンネルと類似していたが、不活性化速度はBI及びBIIIチャンネルよりも有意に速く、+10mVにおいて半減期は82.4+33.9msであった。最大電流の50%に不活性化される電位はBI(-8.2mV)及びBIII(-27.9mV)よりも深く、-33.9mVである。BIIチャンネルはDHP、ω-コノトキシン、ω-アガトキシンの全てに非感受性であった。低閾値チャネルを阻害する100μMニッケルイオンはBIIチャンネルを50%以上阻害した。更には単一チャンネル電流の解析をしたところ、110mMBa^<2+>をチャージキャリアとするとスロープコンダクタンスは12.1pSとなり、これはBIの16pS及びBIIIの14pSより若干低い。 以上の実験によりBIIチャンネルは全くどの型にもあてはまらない新しい型であることが明らかになった。さらにBI、BII及びBIIIの3種の非L型チャンネルは共に神経伝達物質放出に関与すると考えられる。また機能的性質の異なる3種のチャンネルの相対的発現量を変化させることにより放出する伝達物質を変えたり、放出量を調節したりというシナプス可塑性の基礎を非L型チャネルの分子的多様性がなすと考えられる。
|