本研究の目的は、GABAB受容体の特異的なモノクローナル抗体を用いて、その阻害作用を利用して、脳内に注入したときどのような効果が得られるかということの基礎的検討である。 この結果、以下の事が明らかとなった。 1. GABA_B受容体に対する特異的なモノクローナル抗体がえられた。 2. このモノクローナル抗体は、受容体へのGABA結合を阻害する。 3. 受容体への抗体の作用の仕組みはアンタゴニスト的である。 4. このモノクローナル抗体の脳内注入により小脳での反射が抑えられた。 このように、モノクローナル抗体の脳内注入により、期待された生理作用を見出すことが出来た。 しかしながら、モノクローナル抗体を実際に薬として応用していくためには、乗り越えなければいけないいくつかの問題点がある。一つは、注入されたモノクローナル抗体がどのような運命をたどるものであるのか、ということが解明されなければならないであろう。また、lgMのような巨大分子からなるモノクローナル抗体の場合には、より効率的な断片化の方法が必要であろう。また、それらが実際にシナプス間隙に侵入しているということも証明されなければならないであろう。これらのことがらは一つ一つ非常に難しいものであるが、もしこれらの事が解決されれば、本研究で解明されたいくつかの基礎的事実とあいまって、モノクローナル抗体の薬理学的応用につながっていくものと考えられる。
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