前年度にラット脳より単離したクローンRBU-15は、新規なcDNAであるが、完全長ではなかった。この遺伝子の全体像を明らかにする目的で、前年に使用したライブラリーとは別個のものを作成したり購入したりして完全長cDNAを得ようとしたが、不成功に終わった。RBU-15に特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いてcDNAライブラリーを作成しようとしたが、失敗した。また、PCRに基づくRACE法を用いて5′領域を増幅しようとしたがア-ティファクトによると思われるDNA断片ばかりが回収され、成功には至らなかった。最後の手段としてRBU-15の対応する染色体クーロンを単離して5′領域の構造を明らかにしようとしたが、cDNAの5′末端からわずか20bpあまり上流に、長大なイントロンがあることが判明し、この試みも頓挫した。 ここに至り材料をヒトに切り替えることにした。RBU-15をプローブにヒト脳cDNAライブラリーを検索したところ、HB-954と名付けた完全長クローンを得ることができた。 HB-954がコードするタンパク質には、4箇所のN末端糖鎖結合部分、7回膜貫通部分ならびに比較的大きな細胞質部分が見い出された。 HB-954やRBU-15にコードされる受容体のアミノ酸配列は、ヒトとラットの間で高度に保存されていた。しかし7回膜貫通型受容体スーパーファミリーに属する既知の受容体で特に近縁なものは見あたらず、このタンパク質が新しいサブファミリーに含まれる可能性が示唆された。 In situハイブリダイゼーションを用いたラット脳における発現部位特定の試みは未だ成功していない。
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