本研究の目的は、神経伝達物質放出のモデル系として培養クロム親和細胞を用いて、伝達物質の開口放出機構におけるGTP結合蛋白質(G蛋白質)と細胞骨格系蛋白質の役割を明らかにすることである。本年度は昨年度の研究結果に基づいてさらに、G蛋白質の一つ、GoによるCa^<2+>依存性の抑制的調節、ならびにミオシン軽鎖キナーゼのCa^<2+>依存性機構への関与を、開口放出のツ-ステップ・モデルの上でそれぞれ明確にするための検討を行い、以下の結果を得た。 1.昨年度の研究で、複数の異なるG蛋白質を直接活性化することが知られているマストパランは、Leaky細胞からのCa^<2+>依存性カテコールアミン放出を阻害することを明かとし、その阻害作用はATP依存性プライミング過程への選択的抑制によることを示唆した。本年度の研究では、放出の初期相は阻害されない一方、それ以後の相に対する阻害作用がGo抗体によって除去されることを明らかにした。また、Cキナーゼ活性化剤とGAP43抗体の影響を解析した結果、ATP依存性プライミング過程を抑制的に調節することGoの活性は、GAP43によって調節され、CキナーゼはこのGAP43のリン酸化を介して分泌顆粒の供給を高めている可能性が示唆された。 2.ミオシン軽鎖キナーゼの特異阻害剤(Wortmannin)および活性阻害ペプチド(SM-1)を作用させた細胞を用いて、Leaky細胞からのCa^<2+>依存性カテコールアミン放出の受ける影響を測定した結果、ミオシン軽鎖キナーゼがATP依存性プライミング過程の必須因子であることを昨年明かとした。細胞膜直下のアクチンネットワークに対するWortmanninの作用を組織化学的に解析した結果、Wortmannin処理によって、膜直下のアクチンネットワークの消失が認められた。この結果から、ミオシン-アクチン相互作用の障害によるアクチン層の形成が阻害されること、及び、膜直下のアクチン繊維が顆粒のプライミングに重要な役割を持つことが示唆された。これらの結果はプライミング機構の解明に重要な知見を提供するものである。
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