研究概要 |
レチノイン酸は神経系形成過程においてその作用が注目されてきたが、成熟脳での生理作用は明らかにされていない。われわれはCRABPおよびRARは成熟後の終脳の一部に発現することを確認しており,ラット成熟脳における局在、およびレチノイン酸による応答を検討することによりレチノイン酸およびレチノイドの脳における生理作用を明らかにしようと考えた.成熟ラットの脳にはRARbetaが発現がみられ、とくに線条体と嗅球にその発現がみられた。抗RARbetaを用いた免疫組織染色では、大脳皮質、海馬、などにも少数のRARbeta陽性の神経細胞がみられたが、線条体には多数のRARbeta陽性神経細胞がみられた。ビタミンA欠乏食で飼育したラットの線条体ではRARbeta陽性細胞が著しく減少していた。レチノイン酸を腹膜内に投与すると6時間以内に睾丸、肝臓、のみならず脳へ取り込まれることから、ビタミンA欠乏ラットの腹腔にレチノイン酸を投与すると12時間以内にRARbeta陽性細胞の数が正常レベルまで回復した。これらの結果をふまえて、ビタミンA欠乏ラットの腹腔にレチノイン酸を投与してのち、6時間後に線条体を分離しmRNAを単離した。PBSのみを腹腔に打ったラットの線条体のmRNAよりcDNAを作成し、ビオチン化したのち、レチノイン酸投与の線条体のmRNAからサブトラクトし、レチノイン酸に応答する遺伝子のcDNAライブラリーを作成した。このライブラリーよりレチノイン酸に応答する遺伝子数十個を分離した.これらのなかにRARbeta、Junなどレチノイン酸に応答する遺伝子が含まれていた。
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