研究課題/領域番号 |
05680695
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
村瀬 一之 福井大学, 工学部, 教授 (40174289)
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研究分担者 |
谷藤 学 福井大学, 工学部, 助教授 (60197530)
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キーワード | 光学的電位計測 / 電位感受性色素 / シナプス前修飾 / 痛覚 / 脊髄 / 一次求心性線維 / セロトニン / オピオイド |
研究概要 |
脊髄後角では痛みを伝える一次求心性線維終末に介在細胞の軸索などがシナプス前終末を形成していることが知られている。また、生理、薬理学的研究によっても、痛み情報の伝達と調節に一次求心性線維のシナプス前修飾が本質的である事が示されているが、それを直接示す実験結果は少ない。そこで本研究では、2次元光学的電位計測法を脊髄横断切片に用いて、各種の修飾物質の投与によって、脊髄後角一帯に分布している各種の一次求心性線維終末の細胞内電位がどのように変化するのかを直接、同時に記録する事を試みた。 ラット脊髄横断切片を電位感受性色素で染色し後角領域の光透過性の変化を高速高解像度カメラで記録した。単一パルス電流で後根のA及びC線維を刺激すると、神経興奮による光応答がまず後角深層(III-V層)に、続いて浅層(I-II層)に発生した。これらの応答は興奮性アミノ酸拮抗薬(APV+CNQX)存在下では立ち上がり部分のみを残して消滅した。また、Cd^<++>を加えたZero Ca^<++>外液によるシナプス伝達阻害下でも同様の応答となることから、一次求心性線維からの早い伝達は概ね興奮性アミノ酸によると考えられる。さて、以上の結果から興奮性アミノ酸拮抗薬存在下の光応答は主として一次求心性線維終末の活動を反映していると考えられる。そこで興奮性アミノ酸拮抗薬存在下で各種修飾物質の効果すなわちシナプス前作用を調べた。セロトニン5HT_<1A>型受容体作動薬8-OH-DPATは浅層及び深層の応答を強力に抑制した。逆に5HT_<2/1C>受容体作動薬DOIはこれらを増強した。5HT_3受容体作動薬2-methyl-5HTはほとんど効果がなかった。また、オピオイドμ受容体作動薬DAMGOは浅層を、δ受容体作動薬DPDPEは深層を中心に抑制した。 以上、本研究によって光学的にシナプス前終末の電位変化が直接計測できること、セロトニンとオピオイドによってシナプス前終末電位が変化することが初めて示された。
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