文部省科学研究費の援助を受けた研究により、卵巣摘出ラットにエストロゲンを投与して、脳内に発現するタンパク質をコードするcDNAの候補をある程度同定することができた。 ウィスター系雌ラットの卵巣を摘出したもの(コントロール群)と、卵巣を摘出してエストロゲン(estradiolbenzoate)50mugを2日間投与したラット(エストロゲン処置群)の視床下部を取り出し、グアニジンイソシアネートの存在下で全RNAを抽出した。この全RNAからさらにoligo-dT celluloseをカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーでmessenger RNAを抽出した。エストロゲン処置群の視床下部messenger RNAを鋳型として逆転写酵素を用いて、reverse transcriptionを行って、そのcDNAを合成した。このcDNAライブラリーと多量のコントロール群の視床下部messenger RNAとをハイブリダイズさせて、両群に共通に発現しているcDNAを除き、ハイブリダイズされずに残ったcDNA(つまりエストロゲンで視床下部に誘導されたcDNA)をランダムプライマー法で^<32>P-dCTPでラベルした。エストロゲン処置群、コントロール群の両方のmessenger RNAを電気泳動して、ナイロン膜に転写したものを、このラベルしたcDNAとハイブリダイズさせた結果、コントロール群と比べてエストロゲン処置群に強く発現する数本のバンドが認められた。 今年度の成果はここまでであるが、今後はこのバンドを形成したcDNAをクローニングし、さらにバクテリアあるいは真核細胞に導入して、コードするタンパク質を合成させて、そのタンパク質を用いて性行動、LH分泌に及ぼす影響を調べたいと考えている。
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