研究概要 |
本年度は,全身麻酔下のネコを用いた動物実験により,従来ほとんど未解明のまま残されてきた脳幹-脊髄呼吸神経機構に対する大脳性入力の作用について,主として神経生理学的手法を用いて明らかにしようとした。これまでに得られた知見は以下にまとめられる。 1.皮質脊髄路線維による下行性接続:大脳皮質運動野(前肢領域)を露出し,銀ボール電極による単極電気刺激(矩形波パルス,0.5-1.0mA)又は大脳脚(脳図譜A6-A8レベル)に双極タングステン電極を刺入し,微小電気刺激(0.1-0.4mA)を行った。両者の刺激効果は類似しており,刺激と反対側の頸髄呼吸性ニューロン(C_1髄節)および横隔膜運動ニューロン(C_5髄節)の発射活動に潜時5-7m秒で生じる早い促通効果とその後約50m秒つづく抑制の2相性の効果が観察された。この場合,延髄のVRG(腹側呼吸性ニューロン群)の呼息性ニューロン発射には抑制効果のみが観察された。 2.赤核脊髄路線維による下行性接続:双極タングステン微小電極を赤核(A3.5レベル)内に刺入し微小電気刺激(0.2-0.8mA)を行い,大脳脚の場合と同じ方法で延髄,脊髄呼吸性ニューロン活動に及ぼす効果を観察した,単発刺激ではほとんど効果は認められず,連発刺激(2-3発,2m秒間隔)の場合のみ,横隔膜運動ニューロン活動に弱い促通性効果が認められた。延髄および上部頸髄の呼吸性ニューロンに対しては連発刺激によっても効果は観察されなかった。
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