1.海馬ニューロンおよびシナプス形成がほぼ完成する生後16-20日齢のラットより脳切片をノマルスキー顕微鏡下に海馬歯状回の局所性抑制ニューロン(Basket cell)と中継型興奮ニューロン(Granule cell)を同定した。 これらのニューロンに対してナイスタチン穿孔パッチ法および通常のパッチ電極法を用いてWhole-cellの電位同定を試みた。 2.セロトニン(2-50μM)をY-チューブよりこれらの細胞に局所投与したところ、約90%のBasket cellからは、内向き電流が誘発された。この電流はセロトニン3型受容体に直接カップルする陽イオン選択性チャネルの開口によるものであることが判明した。 3.セロトニン3型受容体と他の受容体とを比較するため巨核球のアデノミン2燐酸(ADP)受容体の特性を調べた。ラットまたはモルモットの巨核球において、ADP(1μM-100μM)を小型化したY-チューブ法により投与すると、一過性の内向き電流とゆっくりした外向き電流が誘発された。 前者は陽イオンチャネルの開口によるもので、後者はCa^<2+>-依存性K^+チャネルの開口によるものであることが判明した。 4.前者について、マウス巨核球を用いて更に詳しく調べたところ、セロトニン3型受容体と共通の特性(陽イオン透過性/速い脱感作/受容体-チャネル複合型分子構造)が見い出された。 5.ニューロンと巨核球の間にこのような類縁性が有る事は、受容体の作動分子機構やそれらの分子進化の観点からも極めて興味深い。 上述の標本に対し、outside-out法やcell-attached法の改良を試み、受容体分子機構を更に詳しく解析した。
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