研究代表者の開発した哺乳類妊娠後期胎仔をin vitroで生存させる経胎盤潅流法を用いて、哺乳類エンブリオの神経回路網形成機構の解析を行う方法の開発を行った。経胎盤潅流法を用いて、マウス、ラット胎仔をin vitroに取り出し、蛍光色素DiIを、神経系の特定の部位に局所的に注入して、15時間程度生存させると、特定のニューロン群を生きたまま順行性、逆行性に染色することができることが、明らかになった。また15-20時間in vitroで生存させたマウス、ラット胎仔より、種々のニューロンを生きたまま取り出し、生存、成長させることが可能であることも、明らかになった。すなわち、in vitroで、20時間程度生存させた胎仔の後根神経節、脊髄、脳幹、大脳より組織を取り出し、細胞を分離して、単離培養したところ、これら全ての組織について、ニューロンの生存、神経突起の成長を確認することができた。また同様の、ニューロンの生存、成長は、スライス培養法を用いても確認することができた。この結果は、経胎盤潅流法によって生存させた胎仔の神経系の状態が、良好であることを示すと共に、種々の胎仔に対する実験操作を可能にするこの方法で、操作を加えた後の胎仔のニューロンを、次のステップとして、取り出して、培養系に移す、または他の個体に移植することが可能であることを示しており、経胎盤潅流法が、様々な発生神経学的研究に応用可能であることを示している。
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