本研究の目的は光受容タンパクであるオプシンを手掛かりにして、赤・緑・青の3種の錐体を特異的に識別する抗体を作製し、これを用いて視覚神経系における色信号変換の神経機構を免疫組織化学的に解析するものである。このためこれらの錐体外節に存在する錐体オプシンを認識するポリクローナル抗体の作製を試みた。ところがヒトの錐体オプシンの中で赤と緑はほぼ相同な構造を有し、両者を識別する抗体を作ることは事実上下不可能であった。そこで最近解読されたキンギョの錐体オプシンの赤と緑錐体オプシンが異なっていることに注目して、N端近傍のアミノ酸配列から数種類の抗原ペプチドを合成した。これをマウス及びウサギに免疫して、赤・緑の錐体外節を特異的に認識する抗体の作製に成功した。さらに得られた10数種類のポリクローナル抗体を免疫組織化学的に検定した結果、3種類の錐体を選択的に識別する以下の4種類の抗体を得た。PAb Gf-R-N及びPAb Gf-R-20は赤錐体、PAb Gf-G2-Nは緑錐体、PAb Gf-B-Nは青錐体を選択的に標識した。 本年度はこれらの抗体を用いて、硬骨魚類を中心として数多くの脊椎動物の錐体の配列、分布の解析を行なった。さらに蛍光抗体法で標識した標本をレーザー共焦点顕微鏡で解析した結果、錐体オプシンの合成過程が夜間に増大することを示唆する所見を得た。これらの研究成果をまとめた論文を現在準備中である。
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