錐体オプシンの構造に注目して、赤・緑・青の3種の錐体を特異的に識別する抗体を作製し、色信号変換の網膜神経機構を免疫組織化学的に解析した。最近解読されたキンギョの3種の錐体オプシンの構造が著しく異なっていることに注目し、N端近傍のアミノ酸配列を合成して数種類の抗原ペプチドを得た。これをマウス、ウサギ及びヤギに免疫して、3種の錐体オプシンを特異的に認識する抗体の作製に成功した。抗体を用いて、キンギョの3種類の錐体外節を免疫組織化学的に識別する方法を確立した。 初年度は多く種類の脊椎動物の網膜を解析した。この結果、虫類以上の脊椎動物の錐体視細胞とは交差反応が得られなっかった。このことから魚類の錐体オプシンがかなりユニークであることが明らかになった。さらに錐体の配列及び分布の定量的な解析を行なった。蛍光抗体法で標識した標本をレーザー共焦点顕微鏡で解析した結果、錐体内節にはオプシンの輸送小胞と考えられる多数の顆粒が、夜間に増大する所見を得た。オプシン合成の日周期変動に関する詳細な形態学的解析を行った。 次年度はオプの輸送小胞数の日周期変動を生化学的な手法で裏付ける実験を行った。まず、放射性ロイシンを眼球内に投与し、オートラジオグラムで陽性粒子数を測定し、タンパク質合成の日周期変動を調べた。この結果、オプシン顆粒数の増加と平行して、錐体は夜間にタンパク合成が増加することがを明らかになった。さらに放射性メチオニンを眼球内投与して、新成されるオプシンを直接測定する方法(autoradio-immunoassay purification)を開発し、新しく合成される錐体オプシンの日周期変動を直接測定した結果、錐体はオプシンを夜間に合成されることが明らかになった。
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