経口感染の代表であるポリオウイルス感染症は、従来では秀れたモデル動物がなくその発症ならびに予防効果の機序に関する報告は少ない。近年ポリオウイルスレセプターを発現するトランスジェニックマウス(PVR-Tgマウス)が開発されこれらの問題を解明する有用なモル動物であると考えられている。本年度は、ポリオウイルスの経口感染に対する初期防御機序の解析ならびに経口生ワクチンの予防効果を検討し以下の知見を得た。初期感染防御では、抗CD8モノクローナル抗体処理PVR-Tgマウスでポリオウイルスの体内増殖がみられ致死的経過をみた。これらの結果からCD8^+細胞が重要な役割りを演ずるとの結論を得た。 一方、生ワクチンの効果は、強毒株の致死量以下の感染あるいはワクチン株であるSabinI株の経口免疫によった。その結果、SabinI株では2回以上の経口免疫により、強毒株では1回の免疫でも充分な、強毒株に対する防御効果を認めた。これらのデーターは、ポリオウイルスに対する防御機構の解析と経口生ワクチンの作用機序が解明できると考えられる。
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