研究概要 |
常染色体劣性遺伝を示す遺伝性侏儒症ラットrdwは、下垂体の成長ホルモン(GH)およびプロラクチン(PRL)のmRNA発現が低下し、血中GH,PRLが低値であった。しかし、GH,PRLを産生する細胞の分化・増殖に必要で、これらホルモンの遺伝子発現に必要な下垂体特異的転写因子Pit-1mRNA発現は正常であった。 (1)Pit-1はタンパクのレベルにおいても正常であり、下垂体の免疫学的検討においても正常ラットと同じであった。(2)rdwのTSH-甲状腺系は、rdwが正常に比べて血中TSHが高値である反面、血中甲状腺ホルモンが低値であった。(3)ラット由来のFRTL-5細胞を用いてTSHの生物活性を調べたところ、rdwの血中TSHは生物活性を有することが明らかになった。(4)更に、rdwのTSHβ鎖の塩基配列は正常であり、mRNAは正常ラットに比べて多く発現していた。 (5)rdwを4週齢で離乳して0.025%甲状腺粉末添加飼料を給与し、体重の推移を観察した。雌雄ともに添加飼料給与直後から著名な体重の増加がみられた。(6)5週齢から8週齢のrdwに同系の+/?ラットの甲状腺を移植した。甲状腺移植により雌雄ともにrdw/rdwに比べて体重の増加が著名になった。(7)甲状腺移植したrdwの血清甲状腺ホルモン(T4)、GH、PRL濃度が有意に増加した。甲状腺移植rdwの下垂体GH,PRLのmRNA含量は正常ラットのレベルにまで回復した。(8)甲状腺移植rdw雄をrdw/+雌と交配させて繁殖機能を調べたところ、産仔が得られ繁殖機能が回復することが明らかになった。(9)rdw/rdwの産仔の出現率は約50%であり、メンデルの法則に一致した成績が得られた。 rdwは甲状腺機能低下症であり、甲状腺ホルモンの欠損により下垂体のGH,PRLの産生不全をきたして侏儒症を呈すると結論された。
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