本研究では扁桃と全身性免疫系との関連に焦点を会わせ、スンクス口蓋扁桃及び耳管扁桃を対象に微細構造的並びに免疫組織学的検索を実施し、ヒト扁桃疾患の病態解析に関連する基礎的研究を試みた。初年度は、研究計画申請に伴って、二つの課題:1.鼓室内パーオキシダーゼ(HRP)感作に対する耳管扁桃での免疫応答と所属リンパ節内でのHRP抗体産生細胞の細胞動態、更に血中或いは腎臓メサンギウム域でのHRP抗体の変動などについての解析(研究代表者担当) 2.スンクスTリンパ球及びBリンパ球に対する単クローン抗体の開発(研究分担者担当)を主に研究を進めた。 1.についてはHRP抗原の耳管扁桃上皮M細胞への取り込みと多数のHRP抗体産生リンパ形質細胞の扁桃実質及び所属リンパ節(深頸部リンパ節)での出現を確認する事ができた(第2回国際中耳炎シンポジウム、大分、1993、第98回日本解剖学会、札幌、1993、第25日本臨床電子顕微鏡学会総会、松本、1993等に発表)。2.についてはスンククスTリンパ球特異単クローン抗体(ST1)、(マウスIgG2a、カッパー鎖)と同じBリンパ球特異単クローン抗体(ST4)(マウスIgG1、カッパー鎖)を精製することができた(第40回日本実験動物学会総会、仙台、1993に発表)。 これらスンクス単クローン抗体の開発によってスンクス個体の免疫特性の解析が可能となり、それら口蓋扁桃や耳管扁桃さらに所属リンパ節でのT・Bリンパ球の細胞動態の検索などにより、ラット・マウスのリンパ組織での研究と同様、多くの情報を得る事が期待される。現在、これら単クローン抗体を使って、それら扁桃と全身の免疫臓器との相関について検索を進めている。
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