研究概要 |
ヒト扁桃は消化・呼吸器系ではgatekeeperの役割を担う重要なリンパ組織であり、その機能障害は耳鼻咽喉科領域疾患に限らず臨床各科疾患とも複雑に関連している事から、扁桃の機能解明は臨床医学的に注目されてきた。しかしながら、現在、実験医学的研究に汎用されているラット・マウスなどの齧歯目小型実験動物に扁桃を欠くことから、扁桃に関する基礎的研究は少なく情報に乏しい。これらの点に鑑み、本研究では、新しい小型実験動物として開発された食虫目スンクス扁桃に着目、それら扁桃の免疫組織学的性状がヒト扁桃のそれらと何が類似し、何が違うかを検討、パーオキシダーゼなどの人工抗原を用いスンクス口蓋扁桃/耳管扁桃を繰り返し感作、慢性扁桃炎を惹起し扁桃病巣感染二次疾患モデルを作成、扁桃局所と遠隔臓器との関係/扁桃局所抗原特異抗体の遠隔臓器での沈着/それら免疫担当細胞・T・Bリンパ球などの細胞動態などに関し、我々の精製したスンクスT・Bリンパ球単クローン抗体(Tohya K. and Kimura M. : Histochemistry 102 445-450,1994)を用い免疫組織学的染色を行い、超微細形態レベルに検索を行い、全身性免疫系での扁桃の位置づけや扁桃相互間(口蓋扁桃-耳管扁桃、左右の扁桃)と所属リンパ節ホ-ミングリンパ球などについて調べ考察した。 その結果、スンクス口蓋扁桃耳管扁桃ともヒト扁桃のそれらと相同性を有し、それぞれの扁桃に於いて実験的に感作された局所抗原は、主として、それらリンパ上皮共生上皮に位置するM細胞を介し抗原提示細胞に伝達され、ヒト扁桃で予測されていた様な一連の免疫応答を引き起こす事証明でき、スンクスは実験動物学的にヒト扁桃疾患モデルと有用な動物である事を明らかにする事ができた。
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