カーバチルスはマウス、ラットあるいはウサギといった実験動物の呼吸器病病原体としてその存在が知られており、かつ培養が困難であるといった極めてユニークな微生物である。培養によって大量の菌体を得ることが困難なため、病原因子など発病病理の研究はほとんど行なわれていない。ここでの研究目的は、本菌の培養法を改良し、大量の菌体を得、そこから菌体成分を抽出し、病原因子を解明しようとするものであった。 しかし、当初の目的であったマウスとラットから分離された2株を用いたカーバチルスの培養法の改良は不成功に終わった。検討項目は、これまでに本菌の培養で常用されてきた発育鶏卵による方法、我々が先に報告したハムスター気管の器官培養液を添加した組織培養用培地の組成と培養条件の改良、ならびに既知の増殖が認められた培養細胞以外の株化細胞を見出し、その増殖能を検討しようとするものであった。発育鶏卵では使用した卵毎での菌増殖成績が大きく異なり、その傾向は発育鶏卵による継代を進めても変化しなかった。培養液の検討では培地成分と培養に使用する容器の被覆材の検討を行なったが、培養成績の改善は図れなかった。さらに、培養細胞についてはこれまでに報告されている3T3細胞以外の細胞でも増殖することが確認されたが、増殖性は3T3細胞を超えられたなかった。 病原性については、継代株のマウスに対する病原性は再確認されたが、死菌の繰り返し投与による病変は検出されなかった。本菌の培養法を改良し、多くの菌体を得、大量の菌体を投与することによって死菌による発病の有無を検討する試みも不十分なものになってしまった。
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