マウスの毛色を指標としたトランスジーンの検出法を開発するためにマウス個体での発現が確認されているマウスチロシナーゼミニジーンを分子生物学的に改変し、その組換えDNAのマウス個体での発現効率とその安定性を検討した。 チロシナーゼ遺伝子をトランスジーンのレポーター遺伝子として使用するためには、全長をできるだけ短縮する必要がある。そのために上述のマウスチロシナーゼミニジーンのプロモーター部分のうち、発現に必須であると思われる部分0.7Kbを残し、他の1.9Kbの部分を除去したミニジーンmg-Tyrs-JSを作成した。改変が目的どうり行われたことを、短縮化したプロモーター部分の全域をシークエンシングすることにより確認した。次に、この組換え体DNAをマウスL細胞にエレクトロポレーション法によってトランスフェクトし、培養細胞での発現を確認した。その結果、発現はもとのミニジーンに比べて若干弱いものの、正常に発現していることが明らかになった。そこで、この組換え体DNAのベクター部分を除去し、微量注入法でマウスの受精卵へ導入した。仮親の卵管に移植した320個の受精卵から49頭の産仔が得られた。しかしながら、これらの産仔はいずれも白色で、有色のものは1頭も出現しなかった。この結果から次の可能性が考えられた。チロシナーゼ遺伝子はマウスゲノム中に導入されたが発現しなかった。改変した組換え体DNAが致死作用を持つために、トランスジーンを持ったマウスが生まれなかった。そこで、これらのマウスからDNAを調整し、PCR法によりチロシナーゼ遺伝子が存在しているか否かを確認した。その結果、これらのマウスは全てトランスジーンを持っていなかった。一方、仮親の子宮の着床痕の数を調べてみると、84頭が着床していることが分り、出生しなかった個体が異常に多いことが分かった。この結果は、の可能性を強く示唆した。そこで、この点を更に検討するため、2細胞期においてトランスジーンが存在するか否かを確認した。その結果、2細胞期ではトランスジーンの存在することが明らかになった。現在更に詳しく発生過程を調査し、マウス胚が死亡する時期を追求すると共に、新たなる組換え体を作成している。
|