てんかんのモデル動物スナネズミには、ヒトにみられるような年齢依存性発作過程がみられる。我々はこの発作形成過程には、遺伝素因存在下での外部刺激の反復による、低閾値部域の拡大の可能性があると考えている。我々が発作形成初期に見出した、外部からの刺激による一定頻度の耳介のミオクローヌス様動きをてがかりとし、刺激受容から耳介の反応に至る経路を調べ、そこに存在しうる遺伝素因および発作形成に関与する電気生理学的変化を調べるのが本研究の目的である。以下に、得られた結果と今後の研究方向を述べる。 1.前庭刺激は反復される外部刺激のひとつであるが、前庭核に、発作初発に先立ち異常な形態学的現象が出現すること、その現象とほぼ同様の経時的経過をたどって熱ショック蛋白が出現、増加することがわかった。現在、それらの超微形態を調べている(当研究所・竹内博士、岐阜医技短大・竹内博士の援助による)。さらに、今年度の科学研究費で購入した刺激装置を用い、前庭核の形態学的変化が、発作に関与しうる電気生理学的な変化を伴なうか否かを調べる実験を開始した(新生児用開瞼器を用いた術式に関し、阪大・堀井博士の指導を得た)。 2.上丘は、発作誘因となる予期せぬ新しい環境への反応に関わり得る脳部位と考えられるが、そこに形態学的異常を見出し(1993年度北米神経科学学会発表)、生化学的および、電気生理学的な検討をはじめた。 3.耳介の動きに関わる部位を含む大脳皮質の抑制系の発達を調べ(9993年度日本組織細胞化学学会発表)ラットの同部位での発達(当研究所、平岩助手との共同研究、1993年度日本神経学学会発表)と比較した。スナネズミにみられる発達と遅れと発作との関係の有無を、形態学的および電気生理学的に検討する準備を始めている。 4.耳介の動きに関わる神経経路の形態学的検索を続行中である。
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