本研究では、IC製造技術を用いてカソード面積の変化が最小になるようなカソードチップを製作した。このカソードの構造は、カソード金属にはAu、導電層にボロンをドープしたポリシリコンを用いており、絶縁膜はSiO_2とポリイミドの2層構造とした。この構造によりAuとポリイミドの剥離が進んだ場合でもカソード面積の変化を最小にすることができる。また、流れの影響を減少させるためにカソードをマルチ化した。第2の対策として、内部電解液と同じ0.1MKCl溶液に2%の寒天を添加した塩橋をカテーテル内部に充填し、その中にアノードを設置した。これによりアノードとカソードが空間的に分離し、電極活性物質のカソード側への拡散による化学的クロストークを減らすことができる。以上の対策のもとに、アノード・カソード・電解液・塩橋は全て同一セル内に設置することとし、ここでは外径1.5mm、内径0.9mmのカテーテルを用いた。カソード表面には内部電解液保持用のpHEMAを塗布してあり、ガス透過膜には、DIP法による膜厚約1μmの非晶質テフロンを用いた。この様な構造で試作したセンサの特性は、感度:6.7nA/mmHg、応答時間:22sec(N2→O2)、流れの影響:流速ゼロの時1.33%減少(カソード直径50μm)、経時特性:100時間以上の安定な動作が得られた。ガス透過膜にDIP法による薄い非晶質テフロンを用いることにより比較的速い応答時間が得られ、面積の小さなカソードでマルチ化することにより感度を下げずに流れの影響を減少させることができた。また、100時間以上の安定動作を示すことから、本研究で行ったカソードの改良、アノードからの電極活性物質のカソードへの移動を塩橋の中にアノードを設置することにより防ぐという構造は、小型クラーク型酸素センサの長寿命化、安定化に非常に有効であるといえる。
|