研究概要 |
平成6年度は、昨年度合成に成功したアミノ基を持つオリゴチオフェン分子の真空蒸着膜の作製と評価を行った。合成した分子である、α,α′-ビス(アミノメチル)オリゴチオフェン(BAMOT)とα,α′-ビス(アミノメチル)オリゴチオフェン塩酸塩(BAMOT・Salt)であを以下の条件において真空蒸着し、蒸着膜を作製した。2×10^<-6>Torrの圧力下で、BAOTとBAOT・Saltのそれぞれ10mgをタングステンボ-トに入れ、これを加熱融解して、石英基板に蒸着した。この蒸着膜の赤外吸収スペクトルを調べると、KBrペレットを用いて測定したスペクトルと同じであった。この事実は、オリゴチオフェン分子が壊れることなく蒸着されることを示す。 次いで、この膜のθ-2θのX線回折を調べた。BAMOTは回折ピークが規則正しい間隔で現われており、この膜が基板に垂直な方向に対して秩序よく積層した分子膜からなることがわかる。一次の回折間隔は、1.84nmである。この規則正しい構造から、この薄膜の表面にはアミノ基のような化学的に活性な基が高密度に存在していると考えられる。薄膜の基板への良好な密着性はこのことによって理解し得る。一方、BAOT・Saltの蒸着膜は、上記のような規則的な構造を示さない。また、X線光電子分光法によりBAOT膜の表面分析を行った結果、予想通り表面には高密度のアミノ基が存在していることがわかり、その密度は4×^<14>個/cm^2であった。さらにBAOT膜の導電率を測定した。NOBF_4でのド-ピング前後での導電率はそれぞれ10^<-10>S/cm、10^<-3>/cmであり、従来のオリゴチオフェンに近い値を示した。
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