免疫センサ実現のためには、有機膜表面へ高密度に抗体を固定化することが重要である。そのためには、有機膜表面に高密度のアミノ基のような化学活性基を導入することが重要となる。オリゴチオフェン膜は結晶性がよく、薄膜形成の際に長分子軸が基板面に対してほぼ垂直に位置し積層構造をとることが知られている。このオリゴチオフェンの性質を利用し、オリゴチオフェン分子の末端にアミノ基の導入を行い、高密度のアミノ基を持つ膜表面の作製を試みた。 アミノ基を持つオリゴチオフェン分子の合成は、アミノ基を持つチオフェンモノマーを保護し、グリニャ-ル試薬でチオフェン環の結合し、保護基をはずす方法を用いた。合成した分子は、赤外吸収、核磁気共鳴、元素分析などにより同定した。次に、このオリゴチオフェン膜の真空蒸着を行った。真空蒸着膜の赤外スペクトルは、オリゴチオフェン分子のものと同じであることから、アミノ基などが壊れることなく蒸着可能であることがわかった。また、この膜のX線回析は規則正しい回析ピークを示し、積層構造を持つことがわかった。また、X線電子分光法により表面に高密度にアミノ基が存在することがわかり、その密度は4×10^<14>個/cm^2であることがわかった。 以上の成果は、免疫センサ開発のための原子レベルでの表面改質をオリゴチオフェン分子の性質を利用して行うことができた。
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