現在、血流計測で用いられているドプラ断層法が、一断面内での視線方向の血流速度を表示するのに対し、本研究では三次元空間内の任意の点において、血流の三次元速度ベクトルをリアルタイムで測定し、その分布状態を医師が認識容易な形式で表示するシステムの開発を目的としている。このため、初年度においては以下のような項目について検討した。 1.三次元速度ベクトル計測法の基礎理論の検討 超音波計測の利点である実時間性を保ち、臨床用装置としての実用化が容易となることを重視した。このため、超音波送受信のプローブとしては格子状に細分割された二次元アレイ状の振動子を想定した。さらに電子スキャンと電子フォーカス機能により、アレイ上での送信点および受信点の選択、および焦点の方向と距離は任意に設定できるものとした。次に、この二次元アレイ送受信系の特徴を生かしてドプラ法の原理を三次元に拡張し、リアルタイムで速度ベクトルの直交する3成分の測定が実現できる手法を考案した。 2.測定システムにおける各パラメータ等が測定精度に及ぼす影響の検討 アレイ素子のピッチ、送受信の開口面の大きさ、送受信点の配置など測定システムの各パラメータおよび減衰によるS/N比の低下などが、測定点の空間分解能や速度の測定誤差に及ぼす影響を、理論的考察およびシミュレーションにより評価した。 これらは概ね当初の計画に沿っており、初年度の研究目標は達成できたものと考える。
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