研究概要 |
本研究は平成5年度及び平成6年度の2年間の研究計画によって構成されている。平成6年度(本年度)は平成5年度(前年度)に作製した人工血管用バイオエラスチック材料である弾性・細胞接着性・抗血栓性ポリペプチドpoly[a(GVGVP),b(GRGDSP)]及びその架橋重合体X-poly[a(GVGVP),b(GRGDSP)]の細胞接着性、細胞増殖性、抗血栓性を検討した。細胞接着性試験及び細胞増殖性試験にはウシ大動脈内皮細胞を用いた。細胞接着性試験では、3時間培養後の接着細胞数をカウントし、フィブロネクチンでコートした基層上の細胞数を100%として計算すると、X-poly[(GVGVP),X-poly[(GVGVP),0.002(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.01(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.017(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.025(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.05(GRGDSP)]の各々の基層上の接着細胞数の割合は、それぞれ3.5%,5.2%,49%,102%,103%,106%であった。このことからGVGVP配列のみでは内皮細胞は接着できず、一定量以上のGRGDSP配列が必要であることが示された。ついで接着能を有する架橋重合体を用いて細胞増殖試験を検討した。3日間培養後の増殖細胞数をカウントすると、X-poly[(GVGVP)の基層上の細胞数208個に比べて、X-poly[(GVGVP),0.017(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.025(GRGDSP)],X-poly[(GVGVP),0.05(GRGDSP)]の各々の基層上の細胞数は、それぞれ751個,734個,724個,であり、一定量以上のGRDGSP配列の存在下でのみの細胞増殖が認められた。ヒト血小板を用いた抗血栓性試験でも、GVGVP配列のみには血小板凝集阻害作用はみられないが、一定量以上のGRDGSP配列の存在下では血小板凝集の完全阻害が認められた。以上のことから、材料の弾性試験は検討していないが、このバイオエラスチック材料は人工血管用材料として有用である可能性が示唆された。
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