本年度はゼラチンを材料として用いた。この理由は、ゼラチンがすでに人工血管やカプセル剤などで臨床応用されているためである。しかしこのままでは生体内では数時間で吸収されてしまうので、架橋をする必要がある。今年度は熱架橋およびグリタルアルデヒト(GAと略する)架橋(3種類の濃度)、合計4種類の架橋ゼラチンを作製し、ラット皮下に移植して吸収される過程を組織学的に検討し、また吸収速度も検討した(術後2、4、6、8週)。1%GAで架橋すると8週後でも殆ど吸収されなかった。0.2%GAで架橋すると、2週で10%、4週で40%、8週で70%吸収されて、2週以降に吸収が進行していた。吸収時の反応も4、8週でやや確認できた。0.05%GAで架橋すると、4週ですでに90%吸収され、組織反応もやや激しい傾向であった。熱架橋(150℃、24時間)すると、2週で40%、4週で60%、8週で70%吸収されており、組織反応も激しいものではなかった。 以上の結果より、熱架橋を行ったものが組織反応および吸収速度ともにわれわれが必要とする条件を満たすものと結論した。そこでさらに2週以内の吸収される過程を組織学的に観察した(術後2、4、7、10、14日)。移植後2日目から組織反応がみられるものがあった。炎症細胞の浸潤も観察され、術後7日が最も激しいものであった。しかしこれは14日目には完全に消退した。それ以降は組織反応はほとんどみられなかった。このことから来年度はこの2週以内におこった組織反応の原因について検討する予定である。この炎症反応の原因を解明した上で癒着防止膜を作製し、鶏を用いてその防止効果について検討する予定である。
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