研究概要 |
動脈血酸素分圧(PO_2)は局所血流調節を主る重要な変数である。今年度はPO_2低下時の心筋内微小循環レベルの血流分布を前年度に確立した分子トレーサ法で計測し、局所血流調節の心筋微小循環における役割を評価した。 方法:麻酔開胸家兎を人工換気し[N_2O:O_2=7:3(コントロール,n=6),8:1(低酸素灌流,n=6)]、毛細血管内皮細胞のα_2受容体と結合する血流マーカー:^3H-desmethylimipramine(30μCi)を左房内に投与した。1分後にKCI(i.v.)で心停止し、左室自由壁の心外膜から心内膜まで連続切片(0.1mm厚)を作成した。バイオイメージングアナライザ(ModelHGE,Fujix Co.)により血流分布に応じて血管内皮細胞に取り込まれた^3H-DMIのβ線放射活性を検出し、分解能0.1×0.1mm^2で血流分布のデジタルイメージを得た。各イメージ毎に隣接する局所血流間の相関C_Aと局所血流変動係数CV(局所血流の標準偏差/平均)を求めた。分解能を順次低下させ、イメージを粗視化したときのC_A,CVも求め、血流分布を評価した。 結果と結論:コントロールのPO_2及び左室圧は97±20mmHg,99±1mmHgで、低酸素灌流時には各々26±5mmHg,82±8mmHgに低下した(p<0.001,0.05)。 C_Aは低酸素灌流時に増加し(p<0.001)、この傾向は粗視化によって増大した。逆に、局所血流変動係数CVは低酸素灌流時に低下し(p<0.001)また、両灌流時のCVとも粗視化とともにフラクタル的な減少を示した。以上より、低酸素灌流時における中枢側冠細動脈による局所血流調節の有意性と心筋微小領域血流の空間的一様化が示唆された。
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