1.保育園において、観察開始時11カ月男児と12カ月女児をターゲット児として、役2週間に1日の参加観察を実施した。今回観察した1歳前半までの期間では、ふり遊びとみなしうる行為そのものの頻度はきわめて少なかったが、年長児や保育者のふり遊びを見る時間は15カ月ころより増加する傾向が確認された。また、彼ら自身が産出するふり遊びの特徴として、その開始と終了の区分が不明瞭であったが、保育者がそばでそれを見ているのに気づくと、使っているコップなどの道具を保育者に差し出す、あるいはほほえの返すなどの対人反応が高い頻度で確認された。一方、たとえば、砂をコップですくって飲むふりをしている際に、「あっ、ジュースこぼれちゃった、早く拭いて」と大人の側が、虚構上の意味の変換をせまるような介入をしたばあい、ほとんどのエピソードでそのふり的行為は中断してしまった。 2.障害児通園施設においても、観察開始時4歳(発達年齢2歳)の「自閉的傾向」と診断された女児をターゲットに参加観察を実施した。この事例についても、全体にふり遊びの頻度は少なかった。ただし、上記の健常児と比較して特徴的であったのは、傍観者の存在にほとんど関心を示さず、上述のような対人反応はまったくなく、行為の形態としては「ふり」とみなされることを遂行しているが、その行為の共有するという点での問題性を指摘できる。 3.ふり遊びの発展において、単なる「行為の共有」からその行為の「意味の共有」への転換が必要であると考えられるが、今回明らかになったふり遊びプロセスでの対人反応がその後のふり遊びの発展においてどのような意味を持つのかについて、今後、観察研究を継続する中で明らかにしていく予定である。
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