本研究は、留学生と日本人の間の接触が、双方にいかなる影響をおよぼしているのかを検討することが目的であった。まず、研究対象となる大学を選定するため、全国の6つの大学の留学生担当者(相談主事、国際交流担当者等)を訪問し、留学生と日本人学生との相互交流の潜在的機会(mutual exchange potential)を調べた。そこで、高比率で留学盛を受入れている大学を2校特定した。A大学は、日本語と英語を公用語とし、留学生と日本人学生を対等に扱ういわゆる「統合主義」にもとづく機関であった。一方、B大学は留学生別科をもうけている大学であった。両大学とも欧米系留学生を主に受入れていた。最初に、留学生を対象とする調査では、A大学の留学生のほうがより多くの日本人との接触を報告しており、これらの接触に対する満足度もより高かった。一方、B大学の留学生は互いに社会的サポートを供給する傾向にあり、「留学生村」を築きがちの様子がうかがえた。また、日本人の調査では、A大学の学生はより多くの留学生との接触を報告しており、社会的ネットワークに留学生を含んでいる傾向が強かった。一方、国際交流の結果変数としてみられていた認知的複雑性やコスモポリタン意識は両群の間に何の差異もみせなかった。全体的に、留学生を日本人学生と同じ扱いをする教育政策は、より多くの相互交流を可能とし、しかもその接触に対する満足度と親密度が高いことがわかった。コンタクト仮説で提唱されているように、両者を対等な地位(お客さん、ホストを区別せず)であることが、より親密で個人的な人間関係の構築に起因していると思われる。
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