1.外交史料集成の作成。古代の外交史料をカード化し、そのカードを通交事例ごとにルーズリ-フノートにまとめる作業を行った。活字化されていない史料については、その写本等を実見するために東京方面に出張を行い、史料の集成に努めた。こうして出来上がったノートをもとに、事例ごとに通交の経緯、使者として派遣された者の氏名・官位・経歴、通交の目的及び相手国の対応、賓礼の様子などを整理し、データベース化する前作業に着手したが、このワークシートは今年度は9世紀末までの分しか完成できなかった。今後、10世紀以降についても作業を続け、外交史料集成の完成を期したいと考えている。 2.古代日本におれる外交機構の研究。1で作成したあるいは作成中の史料をもとに、律令条文や延喜式などの法制史料と合わせて、まず古代日本における賓礼の手順や各々の儀礼の場のあり方を整理し、外交機構の大系を考えるノートを作成した。これをもとに、今年度は難波の地における外交儀礼とその変遷を考究することを通じて、古代日本の外交のあり方とその変遷の背景を考察した。この成果は「古代難波における外交儀礼とその変遷」と題して『東アジアと前近代の日本』(仮題)(吉川弘文館、1994年12月刊行予定)に掲載の予定である。今後は、太宰府や諸国での外交や10世紀以降の外交のあり方、外交政策の決定過程などについても研究を深めたいと思う。 3.外交に関わる遺跡の巡見。北陸道の松原客館、能登客館に関わる遺地を見学することができ、今後越前国や加賀国といった到着地での外交や都とのやり取りのあり方を考える参考材料を得ることができた。
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