1.わが国における廃棄物処理の現段階は、一言で言うと、市民ボランティア、自治体及び若干の企業による廃棄物の減量・再利用活動が始まりつつあるということになる。問題は、大部分の企業が廃棄物処理に対する責任を果たさず、上記の活動に単に協力するといる立場を崩していないことである。このような日本の状況を相対的に評価するために、ドイツにおける廃棄物処理との比較を法的側面から行った。 2.ドイツでは、1986年の廃棄物法制定によって廃棄物の回避・再利用が廃棄物処理の中心にすえられるにいたった。特に重要なのは、包装廃棄物法制定によって廃棄物の回避・再利用の責任は第一に企業にあるという考えが、すでに一般化していることである。研究は、このような段階にいたるまでの法状況を文献を中心に後付けていった。まだ研究継続中であるが、現時点では、次のように評価できるのではないかと考えている。 (1)企業に廃棄物の回避・再利用の責任を認める法的根拠は、一つには原因者負担原則であり、二つには製造物責任である。また、事実上の理由は、反対運動が激しく新たなゴミ焼却場建設が困難である、埋立地の不足、他方、包装廃棄物の回避を実効的に行うには、商品の生産段階からの取組みが不可欠であるということが明らかとなった。この点についての日本への詳細な紹介は、今までなされていないので、意味を持つと思われる。 (2)廃棄物の回避・再利用についての企業責任の追求は、一方で、これまで包装廃棄物の処理を担当していた自治体の負担軽減あるいは廃棄物処理行政の民営化の進展という意味を持つことも明らかとなった。 (3)環境法では、国の環境保全責任と(主に企業の)原因者負担原則とが、政策・法原則として認められてきたが、これら相互の関係については、検討されてこなかったので、この点でも本研究は意味があるのではないか。
|